第1回
ここに企画しましたような小さな研究会は、多くの人達からその必要性を指摘されてきました。また、T細胞の初期分化の研究を行っている仲間内では、常々、各自がデータを持ち寄って関連分野の人達を含めて討論できる場を持ちたいという意見が出されていました。幸い、このたび呼びかけました全員の賛同を得て(代理の方も含めて)参加していただき、不完全ながら最初の会合を持つことができました。
免疫学会などの大きな学会は、当然ながら研究討論の場として一通りの役割りを果たしています。しかし、関連分野との対話はロビーでの断片的会話に依存する以外にありません。また、近年とみに多くのシンポジウム等が企画されていますが、聴衆の多くにとっては、情報の一方向的な流れにすぎません。全員が参加意識を持って討論できるような研究会は、とくにわが国においては欠落していると言っても過言では無いように思います。学問上の発想の原点はおそらく個人に属するものでありましょう。一つの発想から研究を進めるのも個人またはその人が属するグループであるかもしれません。しかし、得られた結果から普遍性を引き出し新たな展開をもたらすには、このような会で討論することが大きな原動力になるものと考えます。欧米では、7〜80人が集まって数日遊びながら話し合うような研究会が持たれています。そのような会での討論が、あるいは彼の国々の力の源泉になっているのではないかと考えることがあります。
研究会のあり方として、少なくともいろいろの試みがなされる余地はあると思います。一つの試みとしてこの研究会は、有意義であると認める人が多ければ今後もより充実した形で継続することができるでしょうし、そうでなければ遠からず廃止することになるかと思います。熱意と努力次第では、わが国における研究討論会のモデルとなり得るのではないでしょうか。この会を母体として、やはり小型の国際集会を持つことも可能であると思います。参会者の方々には、研究に関する討論の合間に研究会のあり方についても考えていただき、それらの意見によって、この会のありかたを決めたいと思います。
今回は初めての会合ということで、期間も参加人員も少し控え目に企画しました。大塚製薬のご好意でこの会場を提供いただきましたが、次会もこの程度の規模であればここで行うことはできます。メンバー、会期、会場などについては参加者の意見によって決めるつもりです。
会の名称は、仮に「胸腺談話会」としていましたが、'Kyoto T Cell Conference' としてはどうかとあらためて提案いたします。明日、この会の終了までに最終決定する予定です。
世話人 一同 (1991.9.17)
第1回 Kyoto T Cell Conference プログラム
日時:1991年9月17日(火)13:00より9月18日12:30まで
場所:大塚比叡山荘
Session 1. Storma細胞とT細胞分化
(A) リンパ腫の発生から見たT細胞分化(座長 広川)
1. 佐渡 敏彦 (放射線医学総合研究所生理病理)
胸腺リンパ腫の発生機構
2. 日合 弘 (京都大学医学部病理学第1)
胸腺リンパ腫の発生と胸腺間細胞
(B) Stormal cell lines(座長 日合)
1. 広川 勝いく (都老人総合研究研究所免疫病理)
胸腺stromaのクライテリアに関する試論
2. 平峯 千春 (香川医科大学免疫病理学)
In vivo およびIn vitroにおける胸腺nurse細胞
3. 西村 孝司 (東海大学医学部免疫学)
Thymus nurse cell cloneを用いたCD4-8-およびCD4+8+T細胞のIn vitro分化誘導システムの確立
4. 渡部 良広 (JT医薬研究所)
stroma細胞上でのCD4+T細胞のgeneration
Session 2.
(A)CytokinesとT細胞分化(座長 鈴木)
1. 鈴木 元 (放射線医学総合研究所障害臨床)
胸腺細胞分化におけるIL-2、IL-7の役割り、TLSFの役割
2. 田中 稔之 T細胞分化にIL-2は必要か
3. 湊 長博 (京都大学医学部免疫研)
特異的なαβT細胞の胸腺分化とそのrepertoire
(B)胸腺内および胸腺外でのT細胞分化(座長 中内)
1. 鈴木 隆二、南野 昌信 (東北大学医学部解剖学第3)
末梢T細胞TCRγδ鎖の構造。昨日および遺伝子解析
2. 吉開 泰信 (名古屋大学医学部病態制御研生体防御)
γδT細胞の分化と機能
3. 中内 啓光 (理研ライフサイエンス筑波研究センター)
MRL / lpr T細胞の胸腺ならびに肝臓における分化
Session 3. 分化とrepertoire selection(座長 西川)
1. 西川 伸一 (熊本大学医学部遺伝発生医学研病理)
造血システムのプラン
2. 土岐 純子 (関西医科大学第1病理学)
Go期造血幹細胞からfunctional T細胞への分化過程のin vitroでの解析
3. 岸 裕幸 (九州大学生体防御医学研究所感染防御)
TCR transgenic mouse を用いた胸腺stroma細胞機能の解析
4. 岩淵 和也 (北海道大学免疫科学研究所病理部門)
transgenic mouseを用いたtolerance誘導機構の解析
Session 4. Interaction molecules(座長 宮坂)
1. 倉島知恵理 (都老人総合研究研究所免疫病理)
未成熟胸腺リンパ球のmarker Th-5
2. 喜納 辰夫 (京都大学胸部疾患研究所分子病理学)
stroma細胞表面に発現するgp107の役割り
3. 宮坂 昌之 CD44分子の接着機能調節とその意義
Session 5. Signal transdaction(座長 斉藤)
1. 佐竹 正延 (東北大学加齢医学研究所)
エコハンサー・コア結合因子の分子多型性とT細胞特異的な遺伝子発現への関与
2. 小安 重夫 (慶応義塾大学医学部微生物学)
T細胞受容体のisoform
3. 斉藤 隆 (千葉大学医学部高次機能制御研究センター)
TCRβ鎖のみを発現している胸腺未成熟細胞