第13回
桂先生のイニシアティブで日本のT細胞研究の中心的研究会となったKTCCも、昨年度末での桂先生の京都大学ご退官によって一つの節目を迎えました。それを前後した話し合いから、KTCCを今後も当面はこれまでと同様な形ム京都で、全員発表の形で、生データーを話し合える、形式張らない議論中心の会としてム継続することが了解されました。
そうした中で、第13回KTCCについては、「時間もないし面倒見なさい」という形で、私がアレンジさせていただくことになりました。垣生園子会長のもとで、桂先生のご退官後初のKTCCであるだけに、継承的にという前提はあるものの、今回これまで同様にあるいはそれ以上に会が成功するかどうかは、今後のこの会の発展にとって重要と感じています。
こうした状況でもありますので、今回幾つかの点については、新しい形に変化・発展させました。第一には、運営委員による会の運営は変わりませんが、垣生先生を中心に世話人会を作り、運営委員を更新しました。第二には、連絡・申し込み・抄録送付などを全てメイルでおこなうようにしました。第三に、民間からの助成をお願いはするものの「手作りの会」としての性格の濃いKTCCの開催に当たっては、運営委員自身による会の援助を中心とする形を始めました。第四は、運営委員のみならず広くKTCCを知らせ、この分野で積極的な若い研究者・大学院生に参加して貰う方向にした点です。これらは、全てについてまだ完全でなく、今後発展・改良させなければならない点ばかりです。
KTCCが扱うT細胞の分化と機能に関しては、幹細胞からのリンパ球分化、T細胞初期分化におけるNotchシグナルの展開、活性化ではDCとT細胞のダイナミックな相互作用、システム制御では抑制細胞による免疫応答と疾病制御、免疫記憶の調節、などが大きく発展しています。まだまだサイエンスとして面白いことばかりの気がしますし、若い人々を魅了する分野と思います。
大きな学会とは異なる、手作り会のKTCCを21世紀型に発展させるために今回のKTCCの成功を祈ります。
平成15年6月
第13回KTCC学術集会長
斉藤 隆(千葉大学、理研免疫アレルギー研究センター)
日時:2003年6月27日(金)13:00より6月28日(土)16:00まで
場所:京大会館
Session 1 胸腺環境・細胞分化(座長:高浜 洋介)
1. 塚本 紀之 (明治鍼灸大学鍼灸学部免疫微生物学教室)
ヌードマウス胸腺原基ストローマ細胞における機能分子発現の解析
2. 岩波 礼将 (理化学研究所免疫・アレルギー科学研総合研究センター免疫系発生研究チーム)
胸腺の発生異常を示すメダカ変異体〜胸腺発生の分子メカニズム解明への順遺伝学的アプローチ〜
3. 戸村 道夫 (理化学研究所免疫・アレルギー科学研総合研究センター免疫系発生研究チーム)
胸腺皮質T細胞のTCR依存的運動制御:胸腺内細胞挙動のリアルタイム可視化解析
4. 増田 喬子 (京都大学大学院生命科学研究科生体制御学)
胸腺前段階におけるT系列細胞分化経路に特異的な表面マーカーの同定
5. 宇津山 正典(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子免疫病理)
加齢に伴う胸腺萎縮に関わる遺伝子・因子の探索
Session2-1 胸腺細胞分化機構(座長:河本 宏)
1. 金田 真 (東京大学医科学研究所幹細胞治療)
リンパ球系前駆細胞分化におけるNotchリガンドの役割分担
2. 李 天海 (京都大学ウイルス研究所生体防御)
T細胞分化過程におけるIL-7レセプターの発現調節機構
3. 河府 和義 (東北大学加齢医学研究所免疫遺伝子制御)
センス・ミスセンスに過剰発現させたRunx3転写因子は各々、胸腺CD8シンシングル・ポジティブ細胞の、正常・異常な分子を促進する
4. 谷内 一郎 (九州大学生体防御医学研究所発生工学分野)
CD4サイレンシングにおけるRunx転写因子の役割
5. 新田 剛 (徳島大学ゲノム機能研究センター遺伝子実験施設)
胸腺T細胞分化におけるIAN4の役割
6. 藤本 真慈 (京都大学再生医科学研究所再生免疫学)
マウス胎仔胸腺におけるT細胞分化とNK細胞分化
Session 3 遺伝子再構成(座長:生田 宏一)
1. 河本 宏 (理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター免疫系マスタープラン研究チーム)
胸腺前T前駆細胞のTCRβ鎖再構成前増殖能
2. 鈴木 大介 (東海大学医学部免疫学)
TCRβ遺伝子の再構成順序と対立遺伝子排除
3. 道寛 純一 (富山医科薬科大学医学部免疫学)
マウスRAG-2近位エンハンサーエレメントの性状と転写制御因子
4. 亀山 孝三 (北里大学医学部遺伝子学)
ブタT細胞レセプターγ鎖ゲノム構造の解析
Session 4 抗原提示・認識(座長:小安 重夫)
1. 笠井 道之 (国立感染症研究所血液・安全性研究部)
抗原提示細胞内H2-DM分子陽性compartmentの可視化
2. 塚田 旬 (東京理科大学生命科学研究所免疫生物学)
CD8α+樹状細胞の分化過程におけるSOCS1分子の役割
3. 千住 覚 (熊本大学大学院医学薬学研究部免疫識別学)
遺伝子改変ES細胞由来の樹状細胞を用いたT細胞応答の修飾
4. 加藤 悠 (京都大学大学院生命科学研究科生体制御学)
ヒトγδ型T細胞の示す種特異的抗原認識機構の解析
5. 山下 誠二 (京都大学大学院生命科学研究科生体制御学)
点変異および遺伝子導入によるヒトγδ型T細胞受容体による非ペプチド性抗原認識機構の解析
6. 白鳥 行大 (千葉大学大学院医学研究院遺伝子制御学)
新規NK細胞活性化レセプターによる抗原認識機構
7. 澁谷 和子 (理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター免疫系受容体研究チーム)
CD226(DNAM-1)はLFA-1を介するナイーブT細胞の分化、増殖シグナルに重要である。
Session 2-2 胸腺細胞分化機構(座長:河本 宏)
7. 穂積 勝人 (東海大学医学部免疫学)
NotchシグナルによるT細胞のin vitro分化誘導
8. 佐藤 健人 (東海大学医学部免疫学)
CD4SP/8SP分化におけるAML/Runx蛋白の役割
Session 5 活性化シグナル制御(座長:山崎 晶)
1. 國崎 祐哉 (九州大学生体防御医学研究所免疫遺伝学)
DOCK2による免疫シナプス形成の制御
2. 永福 正和 (大阪大学大学院医学系研究科生体情報科学)
スフィンゴ糖脂質の発現抑制がT細胞膜ラフトの構造・機能に及ぼす影響の解析
3. 谷一 靖江 (大阪大学大学院医学系研究科生体情報科学)
ヒトT細胞活性化に伴うラフト発現上昇機構の解析
4. 入江 厚 (熊本大学大学院医学薬学研究部免疫識別学)
ヒトCD4+T細胞におけるリン酸化タンパク質のプロテオーム解析
5. 鈴木 順一朗(千葉大学大学院医学研究院遺伝子制御学)
ADAPを介するインテグリンの活性化およびactin rearrangement
6. 松田 達志 (慶應義塾大学医学部微生物学免疫学)
SPRY1の発現調節機構の解析
7. 原田 陽介 (東京理科大学生命科学研究所免疫生物学)
CD28シグナルにおけるBc110の役割
Session 6 アナジー・免疫制御(座長:坂口 志文)
1. 中野 直子 (東京理科大学生命科学研究所生命工学技術)
T細胞の部分的活性化とアナジー化の誘導
2. 塚本 博丈 (熊本大学大学院医学薬学研究部免疫識別学)
高密度に提示されたTCRアンタゴニスト刺激により誘導されるRaf/MEK/ERK活性化機構の解析
3. 小柳 円 (東京女子医科大学微生物学免疫学)
SEA長期暴露マウスのT細胞の性状の解析
4. 堀 昌平 (理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター免疫寛容研究チーム)
転写因子Foxp3による制御性T細胞分化の制御
5. 瀬戸口 留可(京都大学再生医科学研究所生体機能調節学)
免疫制御性CD25+CD+T細胞の維持におけるIL-2の役割
6. 石田 昌義 (京都大学大学院生命科学研究科生体制御学)
PD-1/PD-L1システムによるCD8型T細胞の有する抗腫瘍作用制御機構
Session 7 Th1/Th2メモリー(座長:中山 俊憲)
1. 田中 伸弥 (東京理科大学生命科学研究所免疫生物学)
IL-4遺伝子座conserved non-coding sequence(CNS)-2領域におけるメモリーT細胞、NKTおよびマスト細胞特異的IL-4産生制御
2. 山下 政克 (千葉大学大学院医学研究院免疫発生学)
Type2細胞分化とヒストンアセチル化のシグナル制御
3. 有村 裕 (東京女子医科大学微生物学免疫学)
AktはTh分化における中立的増幅因子である
4. 坂本 明美 (千葉大学大学院医学研究院分化制御学)
メモリーCD8T細胞の維持におけるBc16の役割
5. 西村 仁志 (九州大学生体防御医学研究所感染制御学分野)
抗原特異的メモリーT細胞の形成維持におけるCD30L/CD30シグナルの意義
Session 8:自己免役(座長:鍔田 武志)
1. 長谷川 明洋(千葉大学大学院医学研究院免疫発生学)
CD69分子による関節炎の発症制御
2. 饗場 祐一 (東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部免疫学)
B細胞特異的CD40シグナルによるSKGマウスRA様関節炎の発症
3. Y. Nakai (Immunobiol., IGM)
Natural killer T cells aggravate atherosclerosis in mice.
4. 樗木 俊聡 (秋田大学医学部生体防御)
サルコイドーシスモデルにおけるIL-15の役割
5. 嘉納 辰夫 (京都大学再生科学研究所再生免疫学)
BALB/c.CD45.1congenicマウスにおける免疫異常